ケルソーシュラッグは、肩甲骨を上ではなく後ろへ引いて寄せる種目です。胸を支えに預けて腕を長く垂らし、肘を曲げずに肩甲骨どうしを寄せます。可動域は短く、腕はほとんど重量を持っているだけです。
よく使われるセットアップは2つあります。チェストサポーテッドのロウマシンかTバーを使う方法と、ダンベルかバーベルを持ってインクラインベンチにうつ伏せになる方法です。
名前の由来は、筋力トレーニングの著述家であるポール・ケルソー(Paul Kelso)です。彼は1990年代初めに『The Kelso Shrug System』でこの考え方を示し、2002年の『Kelso’s Shrug Book』でも改めて解説しました。彼によれば、この動きが初めて活字になったのは1968年、『Iron Man』誌に載ったピアリー・レイダー(Peary Rader)の短い記事です。ケルソーはケルソーシュラッグを多くの種目に応用できる原理として扱っていて、現在ほとんどの人がこの名前で指しているのは、彼が「ラットシュラッグ(Lat Shrug)」と呼んだバージョンです。
BrolicにはKelso Shrug(ケルソーシュラッグ)として登録されています。ダンベル、バーベル、マシン、Tバーの各バージョンと「chest-supported shrug(チェストサポーテッド・シュラッグ)」は、すべてこの1つの項目の別名です。器具が違うと重量は比べられないので、毎回のセッションで使った器具をメモしておきましょう。
鍛えられる筋肉
肩甲骨を寄せる動きは、肩甲骨の内転です。これを行うのは僧帽筋中部と菱形筋で、ケルソーのように「下げて後ろへ」と意識すると、僧帽筋下部が肩甲骨を引き下げます。そのためこの種目は背中上部の種目に分類され、Brolicでも背中上部としてタグ付けしています。
僧帽筋上部の働きがなくなるわけではありません。ほかの肩甲骨内転種目の研究では、僧帽筋上部も僧帽筋中部や菱形筋と一緒に働いていることが記録されているので、ケルソーシュラッグで僧帽筋上部がまったく使われないとは考えないでください。これらの研究は別の姿勢での筋活動を測ったもので、ケルソーシュラッグそのものを、筋活動、筋肥大、筋力のいずれについても調べた研究はありません。
セットアップ
必要なのは、胸を支えるパッドと、腕を伸ばした状態で持てる重量だけです。いちばん安定して快適に感じるセットアップを選び、それを続けましょう。
- ロウマシンまたはTバー:チェストサポーテッドのロウマシンか、チェストサポーテッドのTバーロウを使います。腕がまっすぐ垂れ、しっかりストレッチした位置でハンドルに届くように胸のパッドを合わせます。メリック・リンカーン(Merrick Lincoln)のマシン版では、ワイドなオーバーハンドグリップを使います。
- インクラインベンチ:足を床につけてうつ伏せになり、両手にダンベルを1つずつ持つか、ベンチの下にバーベルを置きます。All Strength Trainingはベンチを30°にし、親指を約45°内側に向け、手が必要に応じて回旋できるようにしています。ケルソーは45°以下を勧め、角度を変えると働く筋肉も変わると述べています。T Nationのバーベル版では、肩幅のアンダーハンドグリップを使います。
- 支えなしで前傾する:ケルソーの元のスタンスです。バーベルを持ってロウの姿勢をとり、8〜10回程度できる重量を使います。腰で姿勢を保つことになるので、記録上は別の種目になります。
グリップは一度選んだら、変えずに続けましょう。ケルソーは、オーバーハンドグリップでは僧帽筋の中部に、アンダーハンドグリップでは僧帽筋下部と広背筋に重点が置かれると感じていました。彼は、多くのリフターがケルソーシュラッグと呼ぶようになったのはアンダーハンドのやり方だと書き、「正しいかどうかはともかく」と添えています。彼自身はこの動きをラットシュラッグと呼んでいました。グリップによる効果は彼の印象であり、測定したものではありません。
シュラッグの動作
しっかりストレッチした位置から始めます。肩甲骨を開き、腕を長く伸ばした状態です。ベンチで行う場合は、パッドの上で背中を丸めずに、ウエイトを床の方へ下げます。そこから肩甲骨を後ろへ引いて寄せます。ケルソーの言葉でいえば、狙うのは「耳の方ではなく、肩甲骨の間の一点」です。
腕はまっすぐ保ちます。ケルソーのポイントは、腕で引いたり押したりしないことでした。肘が曲がると、そのレップはロウになります。Dema Ascendは、寄せきるためにトップでごくわずかに肘を曲げることを認めていますが、毎レップ同じであることが条件です。リンカーンは、胸をパッドに押しつける力で動作を助けないようにと付け加えています。
好みでトップで少し止め(ケルソーは任意で4カウントほどの停止を紹介しています)、ゆっくりストレッチの位置まで戻します。ハンドルやウエイトが動く距離はわずかです。
動きがつかみにくければ、ごく軽い重量か重量なしで練習しましょう。Dema Ascendのドリルは、最後までロウで引いてから、肩甲骨を寄せたまま腕を伸ばすというものです。それがシュラッグのトップのポジションです。
通常のシュラッグやロウとの違い
| 種目 | 動くもの | 腕 | 体の姿勢 |
|---|---|---|---|
| 通常のシュラッグ | 肩が耳の方へ上がる | まっすぐ | 立位 |
| ケルソーシュラッグ | 肩甲骨が後ろへ引かれて寄る | まっすぐ | 前傾、または胸を支える |
| チェストサポーテッドロウ | 肩甲骨が寄り、肘が曲がる | 曲がって後ろへ動く | 胸を支える |
コーチングの資料の中には、インクラインベンチの上で肩をすくめて上げる動きを「chest-supported shrug」と呼んでいるものがあります。それは通常のシュラッグに近い、別の動きです。Brolicの別名が指すのはここで説明している内転のバージョンなので、あなたの動きが耳の方へ上がっているなら、別の種目として記録しましょう。
器具のバリエーションを分ける
マシンのスタックの50、Tバーのレバーにつけたプレート1枚、両手のダンベル、プレートをつけたバーベルは、セットアップが違う別々の負荷です。1つの履歴には1つの器具だけを使い、ベンチの角度かパッドの設定、そしてグリップを重量と一緒に記録しましょう。
たとえばマシンが使用中でダンベルに替えるなど、ブロックの途中で器具を替えた場合は、そこから新しい比較が始まります。古い数字の続きにせず、代わりに行ったことをメモしましょう。
記録のしかた
これはマシン版の仮の記録例で、目標ではありません。同じスタックの重量、同じパッドの設定、ワイドなオーバーハンドグリップで3セット行った場合です。
| セット | 重量 | レップ数 | メモ |
|---|---|---|---|
| 1 | スタック50 kg | 12 | トップで2秒寄せる |
| 2 | スタック50 kg | 12 | パッドの高さは同じ |
| 3 | スタック50 kg | 10 | 肘が曲がり始めたので終了 |
合計34レップで、最後のセットが終わった理由も残っています。「肘が曲がり始めた」は、丸めたレップ数よりも翌週に役立ちます。そのセットがケルソーシュラッグでなくなったことがわかるからです。ケルソーは、シュラッグをロウのようにもっとも似た種目のあとに置き、リンカーンはマシン版を、ロウの直後に8〜12回×3セットで組んでいます。どちらもコーチングの実践であり、検証された処方ではありません。
セットアップのメモには無料のトレーニング記録テンプレート(英語)を使い、部位ごとの週間セット数(英語)で、これらのセットが背中上部のトレーニング量にどう加わるかを確認しましょう。
よくある質問
ケルソーシュラッグは、チェストサポーテッドロウと同じではないのですか? 違います。ロウでは肘が曲がり、上腕が後ろへ動きます。ケルソーシュラッグでは腕はまっすぐのままで、動くのは肩甲骨だけです。
マシンとベンチ、どちらがいいですか? どちらでもかまいません。ロウマシンやTバーなら固定されたパッドとハンドルがあり、ベンチならダンベルかバーベルさえあれば行えます。安定して再現できるほうを使い、記録は分けましょう。
オーバーハンドとアンダーハンド、どちらのグリップがいいですか? どちらも使われていて、ダンベルならニュートラルグリップや角度をつけたグリップもできます。ケルソーはアンダーハンドグリップを僧帽筋下部と広背筋に結びつけていましたが、マシンのデモではワイドなオーバーハンドグリップがよく使われます。履歴ごとに1つ選び、記録しておきましょう。
僧帽筋上部にも効きますか? ほかの肩甲骨内転種目と同じく働きますが、この種目を決定づけるのは、肩甲骨を上ではなく後ろへ引いて寄せる動きです。
マシンやベンチがなくてもできますか? はい。ケルソーの元の、前傾して行うバーベル版です。腰と股関節で姿勢を保つことになるので、専用の履歴に記録しましょう。
出典と方法
- Paul Kelso, Kelso’s Shrug Book (Hats Off Books, 2002):考案者による動きの説明、グリップ、支えを使うバージョン、1968年の記事。Google ブックスのプレビューで確認。
- WorldCat: The Kelso Shrug System (Middle Coast Publishing):それ以前の著書。
- All Strength Training: dumbbell Kelso shrugs (2025):インクラインベンチでのダンベルのセットアップとキュー。冒頭のデモ動画です。
- Dema Ascend: Kelso shrug guide (2026):さまざまなセットアップ、わずかに肘を曲げることの許容、練習用のドリル。
- Merrick Lincoln, DPT: the machine Kelso shrug (Breaking Muscle, 2023):マシンのセットアップ、キュー、プログラム。彼のデモ動画を上に掲載しています。
- Eirik Sandvik: Kelso shrugs (T Nation, 2016):インクラインベンチでのバーベルのセットアップ。
- TeachMeAnatomy: the superficial back muscles:僧帽筋と菱形筋の作用。
- Castelein et al. (2016)とKara et al. (2021):ケルソーシュラッグではない、ほかの肩甲骨内転種目での筋活動。
- Brolicの種目カタログ(バージョン2026-09-22.1):種目名、別名、記録方法。
ケルソーシュラッグを筋肉の大きさや筋力について検証した研究はなく、セットアップの細部はコーチングの実践です。どのグリップがどの筋肉に効くかというケルソーのコメントは、彼自身の印象です。記録例はオリジナルの仮のものです。